「三百年の恋の果て」海野 幸
<あらすじ>
白狐の像に封じ込められていた妖しの封印を解いてしまった彫物師の秀誠。紺と名乗るその妖しは、秀誠を三百年前に愛した男の生まれ変わりだと言い、いじらしいほどに一途な想いを寄せてくる。「しまった、―…可愛い」これまで男を抱きたいと思ったことのない秀誠だったが、紺のひたむきさに、知らず心を惹かれはじめる。しかし、紺から好意を寄せられるほどに、彼の過去の男に嫉妬を覚えるようになり―。書き下ろしは、人と妖しというリスクを背負う恋人たちの『水鏡』&『光の先』。
<コメント>
表紙のもふもふ尻尾と、けも耳で、だいたい推測できるとおり、もののけと人間との恋の物語です。
彫物師という呼び方もファンタジーなら、物語に深くかかわってくるサブキャラの金髪碧眼の神主もファンタジーっぽい。\(^o^)/
作家ご自身が突っ込みどころ満載なファンタジーだと折れそうになってましたが、いえいえ、とても面白かったです。
枠にはまらない奇想天外さと、ストーリーの破綻とは別物です。丁寧な心理描写もファンタジーもいい割合で書き込まれてあったと思います。
三百年前に封印されたきつねの紺と、生まれ変わりを頑なに拒む主人公秀誠のお話も面白かったのですが、はるとしては、二人に大きくかかわる神主の祥真がよかったですね。
応援するかと思えば、ひどく突き放したり、きつい言葉を言いながらも、二人を見守るこの複雑怪奇な精神構造!
なぜに神主がわざわざ金髪碧眼かと、物語の破たんを感じさせられましたが、これにもわけがありました。
巻末に収録されているスピンオフ作品「光の先」で、祥真と彼の使役の緋耀との関係がはっきりして、祥真の人となりを知ることができました。
こっちのカプのほうが痛くて切なくて、本家のラブラブなばかっぷるより、はる好みのお話でした。
「光の先」を読むと、孤独な祥真がいかに友人である秀誠を大事に思っているかがわかります。
自由奔放にふるまっているようで実は、自分を犠牲にし一族のためにつくしている祥真。
それは緋耀の立場を守るためであるという背景がみえてくると、物語は複雑です。
使役なのに自分を守るために主人が意に沿わぬ生活を強いられていると分かっているだけに、緋耀は祥真に愛されたいという気持ちを自ら禁じ、欲望をひっそりと胸に閉じ込めてしまいます。
そんな背景を読んでから、前にもどって心を通じ合わせることができた紺と秀誠をうらやむセリフを吐く緋耀のシーンは、なんとも切なく、胸に迫ってきます。
一粒で二度おいしい、そんなお話でした。
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